2021年03月23日
【対談】"コロナに負けない”飲食店 未来へのかたち

当社が企画・開発した「イートシールド」をご購入いただいた飲食店
株式会社セオリー代表取締役社長 原誠志様と当社代表取締役社長 平澤浩一が
「コロナ禍における外食の在り方、未来へのかたち」をテーマに
対談をさせていただきました。
(取材時2021年2月の状況となります)
<株式会社セオリー様とは>
「日本酒文化・日本食文化・日本地域文化を後世に伝える方舟になる」
を企業理念に、飲食事業のほか宿泊、物販、EC事業を手掛ける。
「スローフードカンパニー(食を通じた地域貢献企業)」。
2021年2月現在「方舟」「方舟 大吟醸」をはじめ首都圏のほか
富山や新潟でも飲食店を運営中。
平澤:はじめまして。本日はよろしくお願い致します。
原 :よろしくお願い致します。
平澤:今日初めて御社が運営されている店舗のおひとつである
「方舟 大吟醸いろり」さんにお邪魔したわけですが。
まずは立地に驚きました。銀座の目抜き通りのビルの中です。
一等地の中の一等地ですね。煌びやかな街からお店に一歩入ると
落ち着いた雰囲気に心が和みます。
原 :ありがとうございます。
平澤:そして驚くのは個室に囲炉裏が備え付けてあることです。
大変失礼ながら、これは本物の囲炉裏ですよね?
原 :正真正銘、本物の囲炉裏です(笑)。
銀座のビルの中で囲炉裏を持つ飲食店は他には
存在しないのではないでしょうか。
平澤:素晴らしいですね。ここで焼く魚、美味しいでしょうね。
囲炉裏を囲んで人と人とがコミュニケーションを取る場所を
この大都会の真ん中で提供されているというわけですね。
本来ですとこの雰囲気も併せて会話も弾み
とても賑やかなお店なのかなと想像します。
<コロナ禍の飲食店として出来ること>
原 :現在、コロナにより飲食店は午後8時までの営業となっています。
我々のようなお酒が中心の飲食店にとりましては大変な事態です。
平澤:この界隈でお仕事を終えて、お店に到着する頃には
すでにラストオーダーという。
原 :そうですね。お店の滞在時間は1時間程度でしょう。
ですがそのような状況でも有難いことに毎日少人数のグループの
お客様を中心に来店くださるのです。つまりこう思うのです。
人は食事を通して人と人との結びつきを強く求めている。
人間関係の希薄化が進むことに耐えられず
居場所を求めている方々は必ずいるのです。
平澤:そのようなお客様の受け皿というわけですね。

原 :非常に悩みました。
営業自体をやめてしまうという選択肢も勿論ありました。
ですが、他人の厳しい目もあったかもしれませんし
周りの評価もあったのにそれでも来店くださるお客様が
いらっしゃるのであれば、店として出来うるだけの
手を打ってお迎えしなくてはなりません。
そして安心してお食事ができる場を提供して差し上げたい。
そこで御社のイートシールドを導入することになりました。
平澤:ありがとうございます。
イートシールドも含めて今この世の中に
「100%コロナウィルスを防ぐ」という製品は残念ながらありません。
心理的不安を軽減するものでしかありませんが
その中から当社の製品を選んでいただきありがとうございます。
原 :飲食店として何もケアせず営業をしている店もあれば
お客様に安心感を持っていただくために奔走する店もある。
当社の場合はひと通り基本的な対策はしたうえで
イートシールドを揃えているということで一歩、二歩も
意識が高いよね、とお客様に思っていただきたかった。
今できる最善の感染症対策をすることが企業姿勢と考えています。
平澤:アルコール除菌、検温、換気、席同士の間隔の確保。
それはもう当たり前として外食業界に浸透しています。
ですが外食にとってポイントとなるのは、マスクを外す
「食べる・飲む」という瞬間をどうすれば良いのかですよね。
簡単なのは「一切喋らない」しかないですよね。
またはマスクを頻繁に着け外しする。
これでは飲食を楽しむという領域までは程遠いものです。
原 :そうですね。
その点イートシールドは飲食も会話も出来るシールドなので
まさに打ってつけの製品です。
平澤:都度マスクをずらして食べる、飲むという方法は
飛沫予防の効果は高いとは思いますがストレスは相当なものです。
人と人が顔を合わせて、話し合って、その仕草も含めて伝え合う。
つまりコミュニケーションですよね。
イートシールドはいかに自然にコミュニケーションが出来るかに
重点をおいて開発しました。

原 :そのコミュニケーションに飲食が加わることにより
さらに人間関係が円滑になると私は思うわけです。
仮にこのまま人と人が対面で食事しない慣習が成り立ったとすると
そこから生じる人間関係の希薄化は社会にとって
極めて深刻な状況になるのではないかと危惧しています。
平澤:今の状況でそこに必要なものというのは
「100%安全ですという絶対的なもの」なのか
「安心感」という数字ではないマインド面なのか。
そもそも絶対的なものは存在しませんので
マインド面の一択になるわけですが。
原 :何事も完璧を求めたとしても、実は相手はそこまで求めていない
場合があります。当社の場合、お客様が何を求められているか
という観点からすると「安心感」に行きついたわけです。
コロナ禍という状況でも、まがりなりにも多少お客様が
来てくださることを考えるとそのようなお客様に対して店をあげて
会社をあげて最善の対策を行う事が必要と考えます。
<これからの飲食店に求められるもの>
原 :緊急事態宣言が解け営業時間が延長されれば
またお店に活気を取り戻せるであろうと思います。
ただ間違いなく今までのような企業宴会や会社の飲み会
行事としての飲み会とか、こういったものはもう
相当数が無くなるであろうと。
平澤:そうですね。
原 :会社の宴会だから「行かなきゃいけない」と無理やりに
来ていた人が今後は減っていき、本当に行きたい人だけが参加する
という形になりますね。これは間違いないと思います。
いままでのお客様が100だとしたら70くらいに減ることに
なるのではないかと思います。
平澤:客数は減りそうですよね。それは容易に想像が出来ます。
原 :100が70になり、もしかすれば60になるかもしれません。
そんな時に店としてどう生き残ってくるか。
店舗の賃料等が下がってくれるわけではないので
客単価を上げるしかない。単価を上げるには価値を上げていくしかない。
シンプルに考えるしかないわけですよね。
平澤:価値を上げるということは大変なことです。

原 :やがてはお店も淘汰されていくと思いますので
お酒が中心の飲食店の数はある程度までは減ると思います。
その中で今までと同じように、とりあえず席を埋めるため回転させて
2時間制の飲み放題をして、時間がきたら「はい終了です」
という営業は難しくなるでしょう。
当社もコロナ前ですと団体のお客様も多くご利用いただいていたので
飲み放題をやっていた時期もあります。
平澤:団体客ですと、いわゆる「大酒飲み」の方もいらっしゃったり。
飲み放題じゃないと生じる問題もあります。
飲まない人・飲めない人から見ると割り勘は不公平となりますからね。
原 :そもそも飲み放題を利用される団体のお客様というのは
決められた金額があったほうが良い場合が多いですからね。
幹事様の立場からしても定額は楽ですよね。
我々としては幹事様のことも考えなくてはいけません。
では団体ではないお客様が来店されて飲み放題のメニューを見て
どう思うかというと、お分かりになりますか?
平澤:モトを取るぞ!と(笑)。
原 :ですよね、シンプルにそう考えますよね。
飲み放題だと3000円、一杯だと600円。
5杯以上でモトがとれると。何が何でも6杯は飲むぞと。
平澤:でもそれは価値ではなくて、価格であったりコスパですね。
原 :そうなのです。
当社の考え方としましては、必要以上に飲まなくても
じっくりとお酒を味わっていただきたいと思うのです。
生産者の思いを伝えるというのが当社には理念としてあります。
蔵元さんがどういう土地で、どういう米、どういう水、
どういう風土で仕込み、どんな思いが詰まったお酒か
ということをスタッフがしっかりとお伝えをしたうえで味わって
いただきたいのです。そこに対しての理想論かもしれないけれど
蔵元さんも我々もお客様も皆が豊かになるのではないかと考えます。
平澤:背景を知れば味にまた深みも加わりますね。
お酒の成り立ち、いや、生い立ちを、目を閉じて想像しながら飲めば
一層美味しさも増す気がします。
蔵ごとに歴史も味の特徴もありますし、いわゆるマニアな目線ではなくても
「これは自分の好みかも」というお酒に巡り合える楽しみもあります。

原 :コロナはある意味、その大事なことに立ち返られせてくれたというか
そういう考え方に戻る初心に帰らせてくれたと言っても良いと思います。
そこに関してはコロナの意義を感じるしかないなと。
平澤:なるほど、そうですね。
<「外食の趣味化」が始まる>
原 :私はコロナ後に「外食の趣味化」が始まると思っているのですよ。
平澤:「外食の趣味化」とはどういうことなのでしょうか?
原 :コロナ禍でも敢えて外食をしようという人たちは一日三食
生きるために必要に迫られて食事をするのでなく、外食が好きで
自身のライフスタイルに「外食」という楽しみが
組み込まれている人たちですよね。
平澤:そうですね。私もそのタイプです。
原 :これからはそのような人たちが外食業界を牽引してくださると思います。
「外食が趣味」という人たちが飲食店のコアユーザーになるわけです。
企業の宴会では、お酒が好きではない人もほぼ強制的に
付き合わなければならない風潮がありました。
これからは無理やりの宴会というケースは減っていき
本当にお酒が好きな人だけが来店してくれるようになるはずです。
平澤:テレワークや時差出勤も一気に普及して
働き方が変わったことも影響がありそうです。
原 :では未来の飲食店はどうあるべきか。
これは一目瞭然です。
そうした目と舌の肥えた、外食が趣味という方に満足していただけるような
個性と質を追及していく必要が店側に求められるのです。
平澤:お店としての価値を上げていく努力が必要と。
原 :その通りです。
安くてどこにでもありふれたメニューではなく
この店に来ないと食べられないオンリーワンのメニューや
サービスが求められるのです。
平澤:今の時代、あらゆる手段で情報を手に入れられ
グルメ評論家など名乗らずとも誰でも飲食店の情報を発信することが
容易に出来ますからね。
一般の人ですから忖度なしという点では良いですね。
価値で勝負が出来ます。
原 :当社の飲食店は北信越をコンセプトにしています。
新潟、長野、石川、富山、福井という5県の食と酒がコンセプトです。
私が知りうる限りですが、他店にはない特徴だと思います。
新潟の郷土料理のお店ですとか、信州料理屋ですとか
金沢の・・・とかはあるのですけれど北信越というカテゴリというのは
非常に珍しいのではないでしょうか。
平澤:そうですね。御社が初めてではないでしょうか。
原 :ご存知でしょうか?北信越だけで約250の酒蔵があります。
「この酒蔵のこのお酒が飲みたい」と予めお話をいただければ
その酒蔵のお酒を実はうちで全てご用意ができるのです。
これができるお店は他にはないと思います。
平澤:大きな強みですね。
250もの酒蔵とのネットワークがおありなのですね。
原 :入手が難しいお酒を提供するだけではありません。
当社には利き酒師の資格を持つ社員が約30人います。
皆が日本酒のプロです。
平澤:知識のある方がお酒の背景を含めて接客していただけるのならば
お客様の満足度も上がりますね。
日本酒に詳しい方も、これから楽しみたい方もどちらにも
最高のサービスですね。
原 :お店の価値を上げていくという言葉が先ほど出ましたが
急に「では明日から」ということは出来ません。当社の理念は
「日本の酒文化、食文化、地域文化を後世に伝える方舟になる」
です。創業当時から守られています。
外食から家飲みに生活様式が変わった方に対しても
当社の運営する北信越セレクトショップ「ふるまいや」を通して
首都圏ではなかなか手に入らない北信越の逸品や日本酒を
ご提供しています。インターネットによる販売も力を入れており
蔵元さんと関係が深い我々だからこそできる特別に搾ってもらった
日本酒などを多くの方にお買い求めいただいております。
平澤:すでにしっかりとした基盤をお持ちでいらっしゃるのですね。
当社は飲食専門のグラフィックデザイン会社として長年
お仕事をさせていただいております。
「専門」と名がつけば強みでもあるのですが
そこに固執をしてしまうと融通が利かなくなることも多々あると
思っているのです。
幸いにも当社はここ最近ですがグラフィックデザイン
だけではなく、PRや企画、テレビCM制作も携わらせていただいた
経験もあったのでどうにかこの状況下でも途切れず
お仕事をさせていただいております。グラフィックデザインだけしか
頼めない会社ではこのコロナ禍では生き残れなかったかもしれません。
イートシールドの企画・開発は大きな挑戦でもあったのですが
方舟さまをはじめ新しいお客様との出会いの機会にもなりました。
原 :人々の生活様式は大きく変わりました。
しかし大事なのはそこで目先のことを考えて右往左往するのではなく
自分たちが一番大事にしている理念は何なのかを思い起こす
よい契機とすることではないでしょうか。
そしてその強みを磨き上げていくことが大事なのではと思います。
平澤:そうですね。仰る通りです。
原社長のお話を伺い、改めて当社も逆境にくじけてはいけない
と痛感致しました。
原 :コロナ後の飲食店はどうなるか。
お互い楽しみにしましょう。
平澤:そうですね。明るい未来を描きましょう。
本日はありがとうございました。
原 :ありがとうございました。
(敬称略)
「方舟 大吟醸いろり銀座中央通り店」
にて取材